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青空

◆cautions◆

 コチラの作品は死亡描写を含む為、この手の表現が苦手な方は閲覧を御遠慮下さい。
 この忠告を無視して中に入り気分を害されても、当方では一切責任を取りません。

 この物語はフィクションです。誤解の無い様にお願いします。

 自己責任の元、以上を理解した上で大丈夫な方は下記の「続きを読む」からドウゾ。



 相手が偽者なんて解っている。

 彼女を見間違えるはずなんてない。

 あれは偽者。

 でも、それでも彼女のカタチというだけで…

(参ったな、こんな時に)

 カーディナルはギリッと奥歯を噛み締める。

 計画の一駒としてやるべき仕事を終えて、仲間のサポート向かうところだったのに。

 張り詰める空気、向かって来る影と自分だけ居るかの様な空間に。
 次第に剣の柄を握った手が汗ばんで来る。

 建物の影によって作られた黒い人型は次第に色を付け、不敵な笑みを浮かべて彼女はカーディナルに向かってゆっくり歩き出す。


「ふふっ 思った通りね。目標はアナタじゃ無いのに…残念だわ」


 心地好い聴き慣れた声。
 愛らしい見慣れた姿。


「お願い、カー君」


 今一番気に入っている服を着て…

(そんな顔しないでくれ。)


 カーディナルは微かに苦笑いを浮かべる。

「動かないで…。何も言わずに―――」

 オルンテシアは伏せ目がちにゆっくりと近づいて来る。
 迷っている間にも確実に距離が縮まり、踏みしめられた芝生の音だけがする。


( …オルンテシア。 いや、本物なら今別の場所に居るはずだ)


 カーディナルの手が次第に痺れてくる。
 それでも、ここは不用意に動くことは出来ない。
 オルンテシアは真っ直ぐ標的を見据え、しっかりとした口調で言う。



「静かに…逝ってちょうだい」




 煩い。
 頭で警報が鳴っている、が。
 敵と遭遇した以上、此処をただ移動するわけにも行かない。

 かと云って…戦うなんて・・・。


 在れは、本物?


 いや、違う。



 けれど……
 嫌な予感がする。


「…くっ」


 オルンテシアが、カーディナルの懐に収まる様に佇む。
 柄から手を離し彼女に触れる事無く。
 ただ、カーディナルは悲しい様な遣る瀬無い表情を向ける。


 そんな表情を知ってか解らないが、満足そうに微笑んで
 そっと抱き締める。


「ふふっ よくできました」


 オルンテシアはカーディナルにオリハルコンの尖った先を向ける。
 冷やりとした感触が首をなぞり、切先は赤いジャケットを通り腹部辺りで止まり、短剣をもつ手に一気に力を籠める。


「っ!」
「黙って刺されるのは 性に合わないからね」

(…毒 塗ってあるよなーこれ…)

 カーディナルは刃の部分を握り締め、幾らか短剣を遠避ける。
 二人は手に渾身の力を籠めつつ、視線はお互いの目から逸らさない。
 革のグローブから血が滲み出す。


 そろそろ限界。
 確信があるわけじゃないけど、毒が回ると厄介だ…先に仕掛けるか…
 そう考えた時に、オルンテシアは何かを呟き始めた。


 其れは、祈る様な言葉。


 異国の言葉だろうか?

 意味は理解出来ないが、其れは安らかな音の紡ぎ。


 (この言葉は…)


 一瞬、手の力が弱まる。


 暫く抱き合う様に重なっていた一方の影が、崩れて往く。

 彼女がいた辺りが急激に熱を帯び、次の瞬間には芝生の臭いと石ころの感触がした。


 視界には雲一つ無い、ペンキでも溢した様な嘘っぽい青空が広がる。

 
 自分が置かれている状況を除けば、普段の日向ぼっことなんら変わり無い。
 芝生と云う柔らかいベッドに仰向けに寝て、暖かな風と日差しが睡魔を誘う。


 不意に呼ばれた様な気がした。
 先程のオルンテシアの気配はしない。
 重い瞼を煩わしそうに上げると白い光が差し込み、次第に青空へと変わる。


(嘘っぽい…な)


 声もそうだが、この空も。



 いつだったか、シロフォンが用意してくれた大きなお弁当を持ってオルンテシアとピクニックに出かけた時も、こんな空で。
 『嘘っぽい』って話をして笑ったよなぁ・・・。


 重くなった瞼に逆らうこと無く、静かに目を閉じようとする。


「カー君っ!!」


 今度は、しっかりと呼ばれた。


 ずっと後方のエリアにいたはずのシルマリルが駆け寄る。
 愛犬ウォルフガングに指示を出し、目的地に駆け出したのを確認すると、カーディナルの手を取ってぎゅっと握り締める。


「ちょっと!ねぇ!!どうして?なんでこんな事っ…オルンテシアはすぐ来るから頑張って、頑張ってよぉ!!」

 カーディナルの腹部から溢れ出す血を止めようと手で傷口を覆うが、指の間から止め処無く流れ、シルマリルは更に慌て出す。
 血の気の無いカーディナルの紅い瞳に、シルマリルの顔が映る。

「…シル  …ル     んな  に な …よ」


 握ってもらっているはずの手が、別の物の様だ。
 時々思い出したかの様に、ビクッっと身体が痙攣する。

 さっきまで全身が燃える様だったのに、手も足も全く感覚が無い。

(寒い・・・)


「何言っているのか全然わかんないよぉ!こんな時ぐらい自分の心配したらどうなのっ、みんな来るから!姐さん来るから…すぐにっ…」


 額に巻いていたバンダナをカーディナルの傷口に当てる。
 鮮やかに彩られた刺繍も青い布も、みるみる紅く染まり出す。


 カーディナルのこの姿に、自分の不甲斐なさに処理しきれない感情で一杯になり、泣いている場合じゃないのは解っているが、堪えきれず嗚咽が零れる。
 それでも、言葉を詰まらせながらも一生懸命にカーディナルに声を掛ける。


 彼の意識を此処に、繋ぎ留める様に。


「 ・・  ・・・・  …っ 」


 口が動かない。
 ただ口から吐息となって出ていくだけで。

 声にもならない。

 自分の所為で誰かが傷付く事だけは、したくないのに。

 シルマの大泣きって帽子を強請られた時以来な気がするなぁ。
 いや、あの時よりも酷いか。


(お願いだから、そんなに泣くなよ…)


 グリや仲間の事、頼むよ。


 残される側も辛いって聞くけど。
 残す側もこんなに辛いものだとは。


(―――あれ? 俺こんな弱気になるなんてなぁ)


 あぁ…オルンテシアも泣かせてしまうんだろうか・・・。


 仲間の事が頭を過ぎり。
 笑顔になるはずの顔は、ただ目を細めるだけ。


「・・・・!!」



 ごめんシルマ。
 もう、その叫んでる声すら聞こえないんだ。


 もう何も見えない。




 でも。此の空に包まれるのなら悪くないな…。




 ごめん、みんな。 


 どうか 幸せに… 







 オルンテシア…






2008.04.13/Author:くりこ
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2008/04/13(日) | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0)

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