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料理長の不在

 長閑な昼下がり。トセット・シロフォン・ハネウタの3人は部屋で寛いでいた。

「今日も長閑ですわね」

 しかし、静寂はそこで終わった。


 バン!バタンバタン!ガチャガチャ!!

・・・・・・と、乱暴にドアが開いたと同時に来客の姿が。

「3人居たんだな・・・・・・」
「居ても居なくても違いは無いだろ」

 口論をしながら部屋に入って来たのは、見覚えの有る2人。

「ジェディさん?」
「あ、デュレス君だ」
「・・・・・・煩いのが来た・・・」

 3人は順番に口を開いたが、ハネウタだけが小声で本音(?)を呟いた。

「そんなに慌てられて・・・一体どうしましたの?」

 息を切らせながら切羽詰まった様子の2人。

「俺達、追われてんだ。逃げてた最中に3人の家が見えて、隠れさせてもらおうと思ってな」

「え・・・2人がそんなに慌てるって・・・?」

 追われているとの言葉を聞き、3人に緊張が走る。
 不安を隠しきれないシロフォンが声を弱めた。

「いや・・・・・・オレが此処には居ないと言ってくれたら充分なんだ」
「デュレス、俺を外すな」
「あぁ?誰の所為でこうなったと思ってるんだ、この馬鹿兄貴!!」
「てめぇ、人に責任擦り付ける気か?そもそもだな・・・・・・」

「うるさい!!!喧嘩は後でやれ!!」

 状況を弁えず兄弟喧嘩を始めた2人に苛立ち、声を荒げて注意するハネウタ。
 その声に、2人はピタリと喧嘩を止めた。

「お前らが敵わないなら、あたし達は邪魔になるだけだが・・・・・・誰に、追われてるんだ?」
「ティーエル」
「ティー兄」
「・・・・・・帰れ!!」

 2人を家から追い出すと、冗談でこんな事を言うかと言う声を背中で聞きながら、再び椅子に座った。
 まるで、2人は始めから来ていなかったとばかりに、読んでいた本に再び目を落とす。
 しかし、シロフォンは窓から外を覗いて様子を窺った。

「あ」

 すると、また来客がやって来た。

「げ!見付かった!!」
「オレじゃねぇ!!兄貴だ、馬鹿兄貴だ!!」
「・・・・・・いくら兄と弟と言え、今日と言う今日は堪忍袋の緒が切れました」

 シロフォンはハラハラしながら3人の様子を眺めていたが、取り繕うと思って立ち上がった。
 しかし、ハネウタが声を掛けて来た。

「フォン姉さん。障らぬ神に祟り無し・・・・・・」



 ◆ ◆ ◆



 3人を部屋に招き入れたものの、椅子に座っているのは明らかに機嫌が悪いティーエルだけで、ジェディとデュレスの2人は床に正座させられている・・・と云う状態で。

「ティーエルさん、御機嫌を悪くされている様ですが・・・・・・」
 ティーエルは正座している2人を睨んでから口を開いた。

「この2人が、私の、昼御飯を、全部、食べたんですよ」

 あまりにも単純な理由だったが、それが1回や2回で無い事は3人が一番良く判っていた。

「昨日も今朝も・・・その度に改めて作って貰っていますが、この2人全然反省しないんです」

 いつもなら軽く愚痴を言って終わりなのだが、今日に限って怒り心頭。


「・・・・・・では、御二人がティーエルさんの御飯を作るってのは如何でしょう?」

 トセットが妙案を思い付き、それに逸早く反応したのがシロフォンだった。

「あ、それ面白そう!キッチン貸せるし、作り方も教えてあげれるしねっ!」
「・・・・・この2人に?危ないんじゃないか?」
と、ハネウタ。
「大丈夫!ちゃーんと教えてあげるからっ!!」

 寝耳に水と言った様子の3兄弟に対し、盛り上がっている3姉妹。




 結局、3姉妹に流された様に話がトントン拍子で進み、シロフォン指導の下でジェディとデュレスが料理を作る事となった。

 まずは材料集めと云う事で、2人は文句も言えずにメモを持って出掛けた。
 心成しか、まだ喧嘩している様にも見えた。


「シロフォン」
「どうしたの?」
「あの2人に任せて・・・物凄く心配なんですけど」

 正直に本音を述べたものの、シロフォンは笑っているだけだった。




 ◆ ◆ ◆



「料理用の買い出しってのも何だかなぁ・・・・・・」
と、反省の色をあまり見せていないジェディ。
 すると、遠くから見覚えの有る人が見えた。

「わ、ホントに買い出ししてる」
「・・・・・・オルンテシア」

 オルンテシアは吉良・紳・ノルスレイを連れながら街を歩いていた。

「聞いたわよ、罰ゲームで買い出しと料理するんですってね?」
「罰じゃねぇよ」
「あ。僕リクエストのピザも入ってる」
「頼まれてやってる・・・・・・って、待て。『僕リクエスト』って何だ?」

 間に入って来たノルスレイのセリフに首を傾げた。

「さっき、ハネウタとティーエルが来たんだけど『皆で食事会するから、食べたい物あったら何でも言ってくれ』・・・って。それが何か?」
「ピザだと大人数で食えるしな」
 代わりに答えたのは吉良、それに重ねたのは紳。
「じゃあ、買い出し頑張ってね~」

 ジェディと別れたオルンテシア一行は反対方向に進んで行った。



「・・・・・・・・・マジかよ」




 ◆ ◆ ◆



「料理作るのって、シロたんじゃ無くてデュレス?!」

 ビックリする様な大声を上げてしまったが、驚かずにはいられない。
「シルマリル、驚き過ぎ」
「だ、だってー。カー君だって固まってたじゃない!」
「・・・・・・まぁ、確かに予想外だったし」
「でも、シロさんが教えてくれるなら、大丈夫だよ」
 別の場所でカーディナル・シルマリル・グリフェールと会ったデュレスは、ジェディと同様に食事会で自分達の料理でもてなすと言う事実を知った。
 同時に、料理を作るのがシロフォンでは無く自分達だと言って驚かれている最中っだった。

「デュレス、君って料理とか得意だったかな?」
「・・・・・・自分では、あまり・・・・・・」

 カーディナルの質問に、目を逸らしながら答えた。
「ま、兄貴なら割と何でも卒無く出来るから、いざとなったら任せるけどな」
と、この時ばかりは兄頼みと言った様子である。
「お腹空かせて行くから、美味しい料理を作ってねっ!」
「僕、サラダも食べたいな」
 シルマリルの激励とカーディナルの疑問とグリフェールのリクエストを一身に受け、3人と別れた。



「・・・・・・聞いて無いぞ、色々」



 ◆ ◆ ◆



「ティーエル。2人揃って驚いてたな」

 家に戻ったハネウタとティーエルは一休みしていた。

「いいんです。たまにはシロフォンの苦労も判ってもらわないと、全然反省しないと思いますし」
「フォン姉さんの苦労・・・・・・?ティーエル、あんたフォン姉さんの事、まだまだ判って無い様だね」
「シェフの事・・・・・・?」



 ハネウタは、照れ臭そうに少し笑った。








 ◆ ◆ ◆







 料理を任されたものの、ジェディとデュレスの2人だけでは厳しいと云う理由から、手伝いと云う形でシロフォンもキッチンに立っていた。
 
「シロたん、来たよー」
「2人共、順調かい?」
「お邪魔しまーす」

 最初の来客は、シルマリル・カーディナル・グリフェールの3人。


「ちゃんと作れてる?失敗しちゃって参ってるとか言ってない?」
 次の来客は、オルンテシア・吉良・紳・ノルスレイの4人。
「2人の様子見に来たんだけどー・・・・・・大丈夫そうで良かったよ」
と、吉良。
「・・・・・・僕のピザ、まだ?」
「早いよ、ピザは焼き立てに限る」
 ノルスレイにピザの何たるかを主張する紳。




 来客が全員揃って賑やかになったが、トセットが首を傾げた。
「フォン、全員が座るには部屋が手狭ですよ」
「うーん、ボクもそう思ってた所なんだよね」

 13人も居れば狭いと思うのは当然である。
「それじゃ、外で食べようよ!テーブルとか外に出してさー。今日は天気がイイしね」
 提案したのはシルマリル。すると皆が口々に賛成と言い、料理を作っているシロフォン・ジェディ・デュレスが部屋に残った。

「フォン姉さん、テーブルとか机が足りないから、皆が家から持って来ようかって言ってるけれど、どうする?」

 ハネウタが部屋に入って来てシロフォンに尋ねる。
「そうだねー、家に有るだけじゃ足りないもんね。それじゃ、頼んじゃおうかな?」
「OKだよ。皆の家からテーブルと椅子を持って来てー」
と、それぞれの男兄弟に仕事を申し付けるが特に不満を言うでも無く、一旦飛空庭から降りて行った。



「ねー、シロたん。アタシも何か作りたい!」
「あ、私もそう思ってた所なのよね」

と、シルマリルとオルンテシアの2人が追加料理人に名乗りを上げた。
 突然の立候補に驚いたものの、特に反対するでもなく
「いいよ」
と、答えると作業の手を止めて少し考えながら、頭の中で料理レシピを手繰り寄せる。
「はい、コレがレシピと材料。判らない事があったら聞いてね?」
「ありがと!」
「それじゃ、ちょっと出掛けて来るわ。シルマ、行きましょ」
 2人は意気揚々と街へ買い出しに出掛けた。

「あの2人に負けない様に頑張らなきゃだよ~」






 此方は、カーディナルとグリフェール。

「テーブルと椅子って言ってたけれど・・・・・・何個持って行けばイイのかな」
「・・・・・・人数分?」
「うーん・・・・・・吉良達も用意すると思うからなぁ。取り敢えず、シルマと僕らの分だけ持って行くか」

 一応意見が纏まったらしく、自分達の数だけを用意する事にした。
 椅子を数えながら、部屋の隅でテーブルの上に乗っている小物を片付けていたグリフェールを見て、一言。
「あまり散らかすんじゃないぞ。シルマが位置を変えたとか後で煩くなるからな」
 カーディナルの指摘にグリフェールは手を止めたが、位置を変えない様に物を纏めた。
「よし、こんな感じかな。先に行ってるよ」
「あ、そうだ。グリ、そのテーブルは・・・・・・・・って、遅かったか」
 ふと思い出してグリフェールに声を掛けた・・・・・・・が、グリフェールはテーブルと共に潰れていた。
 予想以上に重かったらしい。

「それは重いから僕が持って行くから、椅子を頼むよ」
「・・・・・そうだね」






 此方は吉良・紳・ノルスレイ。

「椅子4、テーブル3・・・・・・・これぐらいかな」
「花瓶も持って行こうぜ、確かあの家は装飾品が無かったしな」
「食器も足りるのかなぁ・・・・・・・」

 大きな御世話だと言われそうだが、意外と品薄の家だった事を思い出し、3人はそれぞれ試行錯誤中だ。

「あー、何が足りないか聞いておけば良かったな」
 考え悩み尽きた挙げ句、適当と思われる物をそれぞれ用意した所、結構な数になってしまった。

「トセさんの家って・・・・・・どんな物が多かったんだっけ?」
 ノルスレイが2人に問うと、2人は示し合わせたかの様に同時に答えた。


「「マンドラニンジン」」
「・・・・・・・」

 少なくとも、それは家具じゃない。と、思った。









 買い出しのシルマリルとオルンテシアが戻って来た時、部屋の中は険悪ムードが漂っていた。

 シロフォンが目を離した間に、ジェディとデュレスが何事かの喧嘩をしていたらしい。

「もぅ・・・・・・人の家でも喧嘩?」
 オルンテシアが呆れた様に話し掛けた。

「「コイツが・・・・・!」」

と、2人同時に相手を差すが、中々埒が明かない様だ。
 どうしたものかと思ったものの、シロフォンが2人の間に入って来た。

「ねぇ2人共・・・・・・・・・ティーエル君の事、キライ?」
「「え」」

 唐突な質問に、2人は目を見開く。

「いや、口煩いとは思うけど・・・・・・・俺よりデュレスの方がティーエルに懐いてるんだが」
「まぁ、嫌いじゃあ無いけどな」

「・・・・・・・そっか。ティーエル君の事が本当に嫌いだったら、ここまで頑張れないもんね」

「・・・・・・・・シェフ、手が足りないから俺の方も手伝ってくれ」
「兄貴、俺が先だ」
「うん、ちょっと待っててね?」

 改めて、3人は再び調理に専念した。










「・・・・・・好かれているんですね、ティーエルさん」
「・・・・・・」

 中からは見えていないが、窓から室内の会話が外に筒抜けで聞こえていた。
 3人の会話を聞いたティーエルは、トセットの言葉に黙って下を向いている。

「フォン姉さんは苦労だなんて思っていない。口を開けば「皆が好きだから頑張れる」・・・・・・単純だと思うなら、そう思っても構わないさ」
 立ち上がり様にティーエルの肩をポンと叩いた。

「でも、そういう所がフォン姉さんらしいと思わないか?」






「皆ー、お待たせ!!」
「さぁ運ぼうか!カー君、グリ、大皿を運んでねー」

「紳、テーブルは拭いた?あと、椅子も全員分を並べたわね?」

 完成した料理を全員揃って外にセッティングしたテーブルに並べ、豪華な食事会が始まった。

「僕のピザ・・・・・・・・・」
「ノルス。何でそんなにピザピザって妙にリクエストが多いんだ?心配しなくても今持って来るよ」

 吉良の言葉に、ずっと「僕のピザ」と主張していたノルスレイの顔がパッと輝いた。

「弟とは言え、未だに判らない所も有るよなぁ・・・・・・・」

と、不思議そうに呟くと皿に盛られた料理を食べ始めた。






「はーい、超豪華・チョコケーキでーす!」

 シルマリルがカーディナルとグリフェールにチョコケーキを差し出した。

「このケーキは、アタシとオルンテシアで作ったんだ!」

 その言葉を聞き、2人の手がピタリと止まった。

「・・・・・・2人共、何で止まっちゃったのー!!」
「いや、別に深い意味は無いんだ・・・・・・」
「・・・・・・僕も」

 2人は顔を見合わせると、覚悟を決めた様にケーキを一口食べてみた。

「・・・美味い」
「ホントだ、美味しい」

 感想を聞くと、オルンテシアとハイタッチをして喜んだ。







「ティーエル、俺達も悪いとは思ってるんだけどな・・・・・・」
「料理だからシェフには負けるから何とも言えないし、あまり料理なんてしないから」
「シロフォンより美味い料理を作るのは、無理だと知ってます。まぁでも・・・・・・」

 時間の経過か、それとも先程の会話を聞いた為か。ティーエルの怒りは既に治まっている。
 一言だけチクリと言うが、フォークを置いて口元を拭いた。


「今日はシロフォンが作るより、美味しかったですよ」






「楽しそうだ」

 3人を眺めながら呟いた。

「・・・フォン姉さん、こうなる事を見通してたのか?」
「ん?こうなる事って?」
「・・・・・・何でも無い」

 ハネウタはジュースを飲み干してからトセットの方を向くと、トセットは静かに微笑んでいた。


「今日も、平和でしたわね」




2007.04.24/Author:苑@丸投げ
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2007/04/24(火) | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0)

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