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For Good

 タイタニア。

 一定の年齢になると地上へ行き、試練を乗り越えると謂う掟により下界へ放り出される。
 光に包まれ球体となって、地上へ向かう仕来りになっている。


 この日、その仕来りに従い下界へ行く者が居た。
 どこへ落ちてもソレは試練として覚悟を決めていた。

 が・・・落下時間がやたら長い。


 まさか海へ落ちるんじゃないか・・・と云う不安。



 すとん。



 地面に着いた・・・・・・と云う衝撃では無い、別の感覚が伝わって来る。


 陽だまりのような暖かさ。

 そして、声が聞こえた。



「たまごー!」



 ん・・・たまご?



「カー君!でっかい卵!」
「なに?高級たま・・・でけぇ!?」
「何の卵だろ」
「まさかドラゴ?こんなトコに?」


 どうやら人の手によって拾われた様だ。
 どうしよう、出るに出れない。


「ゆで卵?」
「いやいや、玉子焼きでしょ」
「食べないで下さい!」

 地上に降りてイキナリ茹でられたら洒落にならない。


「あ。生まれた」

 ぽかーんと口を開けたエミル族の女の子

「あ、タイタニア族が降りてきたのか」

 女の子の頭をポンッっと叩くドミニオン族の青年。

「あたしはシルマリル、エミル族のレンジャー。で こっちがカー君」
「そこはフルネームで呼んで欲しいんだけど・・・僕はカーディナル、ブレードマスターだよ。で、キミは?」

 タイタニア族の少年は、シルマリルとカーディナルの顔を交互に見る。

「僕は・・・・・・。」




 名前・・・何だっけ?




 さっきまで憶えていたはずなのに。
 記憶が曖昧だ。


 憶えていたという事すら、ただの思い込みなんだろうか。


 少年は視線を床に落とすとそのまま口を閉ざしてしまった。


「あーそうか。タイタニアにはシキタリっていうのがあるんだよな。
記憶が欠けてしまった人が多いって噂は聞くけど」

 カーディナルはそう言って部屋の隅にあるキッチンへ歩いて行く。



 小さい手。


 少年は自分の手を見て絶望的な気持ちになった。

(シキタリ・・・あぁ 掟の事か。天界に帰るための『鍵』を探せと転送室のタイタニアが言っていたっけ。)

 その鍵にすぐ到着しない為に、多くの封印術がかけられていて。
 身体が子供の様に小さく、力も無い。
 知識も記憶も所々欠けている様だ。



「よっし!心配しなーい シルが名前を付けるっ!」

 少年の両肩をバシンバシン叩きながら、シルマリルは大きな瞳で少年をじっと見る。


「グリにしようっ!」 
「ちょっと待てっ!ペットに付ける様な感覚で付けるなよ」 

 遠くからカーディナルの声が飛ぶ。


 卵事件もあり、一体どんな名前を付けられるのか・・・・・・と云う不安。



「あ、でもあれだなぁ…いいかもしれない。んーっと」

 カーディナルは何やら思い出そうとしながら戻って来た。

 このままだと僕は『グリ』ってことになるのか?

 この世界の名前感覚と云うのは解らないが、やっぱり不安。


「グリじゃ、不満そうな顔もするよなぁ」 
「えー、いい名前なのにぃー」

 シルマリルは他の名前候補をネコマタと相談し始めた。

 ますますどうなるのか・・・と云う不安。




 あ、思い出した。
 と、ばかりにカーディナルは少年に提案する


「『グリフェール』はどうだろう?よかったらこの名前使ってみないかな。
一応意味は有るけど、内緒なっ」



 なんだか懐かしい響きがする気がした。



 少年はカーディナルの顔を見上げると、一瞬別の人の顔とダブった。

 憶えていないはずなのに、懐かしくて、切なくて、悲しい感じがわいて来る。

 自然と視界が滲んで来る。



「さ、とりあえずお茶にでもしようか。グリフェール」

 そう言って、カーディナルはグリフェールを抱上げると、テーブルの方に向かう。


 テーブルには美味しそうなお菓子・飲み物が置いていて、早くもシルマリルはどれを選ぼうかと本気で悩んでいる。

 そんな光景があまりにも可笑しくて。
 さっきまでの『不安』がどこか消えた様だ。



「 ありがとう 」


 グリフェールはそう言って、シルマリルと一緒にお菓子を選び始めた。


2008.02.03/Author:あぶくも@丸投げ
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2008/02/03(日) | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0)

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